仕事力

心に響く自己啓発

現場感覚は、どのくらい大切なものですか?

ヘンリー・ミンツバーグさんの著書「これからのマネジャーが大切にすべきこと」(ダイヤモンド社 2021年)の中で、著者が最も伝えたかったことは第1章第1話のイースタン航空のエピソードです。

ウィキペディアによると、イースタン航空は1920年代後半から1991年(破綻)まで運航していたアメリカの航空会社で、最盛期にはBig4*1の一つとされていました。

ずいぶん昔の朝、著者はイースタン航空を利用しました。機内食に「スクランブルエッグ」が出されました。それが、今まで食べた中で一番まずい機内食でした。

著者が客室乗務員に文句を言うと、「味のことは承知しているが会社が対応してくれない」旨の返答があったとのことです。

その後別の機会に、イースタン航空のCEOが出航間際の自社便に搭乗した状況を、著者は知りました。乗客の一人をエコノミーへ移動するよう手配して、満席のファーストクラスに同社CEOの座席を用意したとのこと。

同社CEOが申し訳ないと感じたらしく、席を譲ってくれた乗客にお詫びを言いに行くと、その乗客はなんと「IBMのCEO」だったというエピソードが記されています。

イースタン航空のCEOは、ファーストクラスに乗り慣れており、エコノミーの「スクランブルエッグ」を食べたことがなかったのでしょう。

一事が万事。イースタン航空は経営破綻しました。

「第1章 マネジメントの話」の表紙の下に添えられた名言が輝いて見えます。

大きなことと小さなことが私の仕事。

その中間の問題は、誰かに任せればよい。

    松下幸之助

ミンツバーグさんはこう訴えています。

マネジメントは、現場から離れた高い場所でリーダーシップを振りかざすことではなく、地に足をつけて現場に関わっていくことであるべきだ

我が国では現場感覚を大切にする管理手法として、「三現主義」とか「5ゲン主義」とか言われるものがあります。

古畑友三(こばた ともぞう)さんの著書「5ゲン主義 5S管理の実践」(日科技連出版社 1995年)には、「3ゲン主義」「5ゲン主義」のことが説明されています。

異常が起きたときには、マネジャーたちがただちに「現場」にかけつけ、「現物」を点検し、「現実」的に問題を解決するということが「3ゲン主義」。「3ゲン主義」を「原理」・「原則」に従って行うということが「5ゲン主義」、とのことです。

我流ですので異論があるかもしれませんが、僕はこういう「3ゲン主義」を使っています。

「現象」を把握し、本質としての「現物」を確認し、「原点」に立ち返って検討する。

*1:アメリカン航空ユナイテッド航空デルタ航空、そしてイースタン航空のことを、最盛期には「Big4」と呼ばれていました。