論文名:マネジャーの仕事
著者:ヘンリー・ミンツバーグ
出典:「ハーバード・ビジネス・レビューBEST10論文」ダイヤモンド社 2014年
発表年:1975年
【あらまし】
著者は、「マネジャー」を「組織、あるいはそのサブユニットを預かっている人物」と定義します。
そのマネジャーの仕事は何かというと、フランスの実業家、アンリ・ファヨールによって紹介された「計画し、組織し、調整し、統制する」というマネジメントの考え方に基づいて、これまで認識されてきました。
しかし著者は、このマネジメントの考え方に基づくマネジャーの仕事と、実際にマネジャーが行っている仕事とは異なっていると、述べています。
したがって、実際のマネジャーの仕事を探究しないと、マネジャーに仕事のやり方を教えることができないと疑問を投げかけています。
著者は、実際のマネジャーを観察したり、日誌や文献のマネジャーに関する記録を分析したりして、マネジャーの仕事にかかる研究をこの論文にまとめました。
マネジャーの仕事の基本を要約すると、次のようになります。
・マネジャーは、ある組織単位に対するフォーマルな権限を与えられている。
・その権限から、さまざまな対人関係が生まれる。
・その対人関係よって情報にアクセスできる。
・その情報によって、マネジャーは自身の組織単位のために意思決定できる。
さらに、マネジャーの仕事の特徴として、次のように述べています。
・簡略、多様、不連続な行動。活動は内省的でないこと。
・式典、交渉など数多くの決まった職分を遂行していること。
・口頭のメディア、すなわち電話と会議を重視していること。
・マネジャーの仕事のやり方は、当人の頭脳の奥深くにしまい込まれており、科学的でないこと。
結論として、マネジャーは実務を通じて学び続け、自分の仕事について常に内省的でなければならないとしています。また今こそ、マネジャーの現実に即した研究を行う時だと述べています。
【教訓】
著者は、通説とされていたファヨールのマネジャー像にメスを入れ、現場感覚を投入したものと、考えられます。
調査研究によるとマネジャーの活動は内省的でないとされていますが、マネジャーの自己啓発としては「常に内省的」でないといけないのですね。この「常に内省的」という面をしっかり実行すると、優れたマネジャーになれるのではないでしょうか。
また、調査研究では口頭のメディアが重視されていますが、メールやSNSが発達した今日において調査したならば、少し違った結果が出るかもしれません。もちろん、人対人のコミュニケーションがいちばん大切だということに変わりはありませんが。