仕事力

心に響く自己啓発

敵をつくらないためには?

掛川市長の久保田崇(くぼた たかし)さんは、著書「官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術」(朝日新書 2022年)の中で、敵をつくらないためにデール・カーネギーの名著「人を動かす」で学んだことを社会人になってから実践したと述べています。

とくに「人を動かす三原則」が教訓となり、怒鳴りたい気持ちをぐっと抑えたり、批判せずに相手に改善を促したり活用して来られたそうです。ところが、陸前高田市副市長を務めていたときに、国の復興庁に批判めいた発言をしてしまったと失敗談を語っておられます。人は完全無欠ではないので、たまには失敗もあります。

 

「人を動かす三原則」とはどのようなものでしょうか。僕はデール・カーネギー著「人を動かす」(創元社 文庫版 2016年)を読み返しました。

人を動かす三原則

① 批判も批評もしない。苦情も言わない。

② 率直で、誠実な評価を与える。

③ 強い欲求を起こさせる。

一例として、アメリカ大統領であったリンカーンのエピソードを述べます。彼が凶弾に倒れホテルのベッドに寝かされていたとき、スタントン陸軍長官は、

「ここに横たわっている人ほど完全に人間の心を支配できた者は、世に二人とはいないだろう」

とつぶやいたそうです。

南北戦争のとき、戦闘が思わしくなく次々と北軍の司令官が替わったことがありました。。しかし、リンカーンは司令官たちを批判しませんでした。「人を裁くな~人の裁きを受けるのが嫌なら」というのが、彼の座右銘だったそうです。

 

リンカーンは最初から批判しない人ではありませんでした。彼は相手を批判し、相手を怒らせ、決闘寸前に仲介してもらって助かったことがありました。彼は大いに肝を冷やしましたが、おかげで人の扱い方についての大切な教訓を学んだのです。

 

批判しないことも大切ですが、批判を受けた場合の処世術も大切です。デール・カーネギーの別の著書「道は開ける」(創元社 文庫版 2016年)にこう記されています。

批判を気にしない方法

・不当な非難は、しばしば擬装された賛辞であることを忘れてはならない。死んだ犬を蹴飛ばす者はいないことを思い出そう。

・最善を尽くそう。そのあとは古傘をかざして、非難の雨が首筋から背中へ流れ落ちるのを防げばいい。

・自分の犯した愚行を記録しておいて自分自身を批判しよう。私たちは完全無欠を望めないのだからE・H・リトルのやり方を見習おう。偏見がなく、有益で、建設的な批判を進んで求めよう。

E・H・リトルは石鹸の営業マンでしたが、業績が不振でした。そこで、販売先の小売店を訪ね「自分の何がいけないのか」を聞いて回り、この態度によって多くの友人をつくりました。そして、業績は好転し社長にまでなりました。

リンカーンは、「人を動かす」でも登場したスタントン陸軍長官から「馬鹿野郎」と罵倒されたことがあります。リンカーンは、彼の下した命令が間違っている理由をスタントンから聞き納得し、その命令を取り消しました。リンカーンは誠実な批判であれば、喜んで受け入れたのです。

 

以上、久保田さんの著書をヒントにして、敵をつくらない方法を考察してみました。