書名:待ち遠しい
著者:柴崎友香(しばさき ともか)
出版社:毎日新聞出版
出版年:2019年
美しい背表紙の本です。
文章表現も絵を描いているように感じられました。
背表紙には、草花が生い茂った庭の中に三人の女性がいます。三人は次の女性たちだと思われます。
・離れの一軒家を借りて一人暮らしを続けている39歳のOL。
・母屋で暮らす大家さんの女性、63歳。
・同じ敷地内に暮らす新婚の女性、大家さんの甥の嫁、25歳。
この三人の女性たちが中心となって繰り広げる、ちょっとディープなご近所付き合いの物語です。年齢も性格もまったく違うこの三人が、いっしょに食事をしたり旅行に行ったりという関係にまでなります。
気配りとお節介の裏表、人間関係における距離感、一言が聞き手に与える影響などについて考えさせられました。
この物語には、上記の三人のほかに、小さい子持ちの夫婦や老夫婦、飲食店開業の夫婦、キャリアウーマン、離婚した女性、独身の男性などが登場し、現代における多様性を表現したものと思われます。
最近は、「おひとりさま」という言葉をよく耳にするようになりました。39歳のOLは、結婚し子どもを生むという普通の女性の生き方を選択せず、独身を謳歌しています。娘を持つ僕としては、ご両親は心配でたまらないだろうなと思いますが。
読後、煩わしくもあり、温もりもあり、次はどんなお付き合いになるのか、待ち遠しく感じられる物語でした。