仕事力

心に響く自己啓発

「舟を編む」を読んで

書名:舟を編む

著者:三浦しをん

出版社:光文社文庫

出版年:2015年

 

以前に拝読した三浦さんの「愛なき世界」で、理系の研究室の世界を堪能できました。こんどは、「舟を編む」という著書で辞書作りの世界を楽しみたいと思いました。

 

期待に違わず、辞書編集部の仕事を奥深く実感できました。辞書作りは長い年月をかけて行われます。膨大なページ数、見出し語の数です。量は膨大でも、言葉一つひとつをていねいに吟味していきます。地味ながらすごい仕事です。

 

物語の中で多くの言葉が吟味されていきます。たとえば、「あがる」と「のぼる」の違いを僕は意識したことがなかったのですが、編集者は厳密に意識します。普通は、「山にのぼる」と言いますが、「山にあがる」とは言いません。なぜでしょうか?

「あがる」は上方へ移動して到達した場所自体に重点が置かれているのに対し、「のぼる」は上方へ移動する過程に重点が置かれている。

からだそうです。

 

辞書作りは、言葉の説明の吟味、専門家への原稿執筆依頼、見出し語の取捨選択、用例のチェックなどの編集作業から始まります。さらに、校正、用紙の選択、表紙などのデザイン、印刷製本、学生アルバイトを含む労務管理、原価管理、マーケティングなど。このような膨大で、しかも失敗が許されない業務を、計画的に迅速に進めていかなければなりません。

 

登場する面々には個性的ながら悪い人はおらず、みんな各々の仕事に夢中になって取り組む姿に感動しました。僕は俵万智さんの短歌を思い出しました。

むっちゃ夢中 とことん得意 どこまでも努力できれば プロフェッショナル

まさに達人の仕事と言えます。

 

仕事や人生の荒波を越えて、最後に辞書という舟を編んだ結果が出ます。興味津々で読める一冊でした。国語辞典を引くと、読了前と違う見方ができるようになるでしょう。

 

coco02hibi9.hateblo.jp

 

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