書名:お金で読み解く世界のニュース
著者:大村大次郎
出版社:PHP研究所(PHP新書)
出版年:2022年
著者は元国税調査官です。
この本は、「お金」の背景から、主として戦後の世界史を論じ、最後に著者のビジョンを表明されています。ここでは、アメリカ、中国、ヨーロッパ、イスラム世界、日本に分けて論じられています。
論点は多々ありますが、僕が「そうだったのか」と思ったところを説明させていただきます。
アメリカ
アメリカの対外純債務(赤字残高)は、日本円にして1500兆円に上り、世界最大です。なぜ、借金大国なのに経済の覇権を握り、米ドルが世界の基軸通貨になっているのでしょうか。
これは、ひと言で表すと、アメリカの軍事力が世界最強であることが信用の裏付けとなっています。
中国
中国共産党政権が誕生できたのは、国民党の腐敗によることが大きかったようです。蔣介石政権の幹部がアメリカから援助された大金を手にし、一般大衆が潤わなかったとのことです。そのため、国民党兵士の多くが共産党軍に寝返りました。
それから、中国では、新疆ウイグルを始めとした自治区が国土の3分の2を占めています。自治区が独立すると経済的に困るので、政府が弾圧しているようだと述べられています。
ヨーロッパ
イギリスがタックスヘイブン(租税回避地)のお金の大半を支配しているそうです。もともと、タックスヘイブンはイギリス領の植民地で始まりました。
また、ロシアはGDP世界11位ですが、資源大国だからこそ、アメリカに強くものが言えるそうです。
イスラム世界
アフガニスタンのタリバンは、国民の貧困が続いたため、復活できたそうです。前政権は私服を肥やし、一般国民にお金が回りませんでした。
日本
対日貿易赤字に加えて日本企業によるアメリカ資産の買い取りで、アメリカが恐怖を感じたことが、日本の巨額国債やバブル崩壊のきっかけでした。日米交渉の末、必要のない公共事業の増大や不動産融資の総量規制を行ったことが政策の失敗ではなかったかと、論じられています。
世界経済の行方
著者のビジョンとして、「世界中央銀行」と「世界通貨」の創設を提唱されています。
僕の感想として、このご意見については実現性をもっと検討しなければならないと思いました。
【僕の感想をひと言】
世界中のお金の問題について勉強になりました。とりわけ、国民がみんなご飯を食べられること、貧困問題をなおざりにすると世の中が乱れることを強く感じました。