「スタグフレーション」とは、景気後退と物価上昇が同時進行する経済現象のことを言います。
「職業的スタグフレーション」は、デイル・ドーテン著「仕事は楽しいかね?」(きこ書房 2001年)で用いられた著者独自の名称です。経済現象のスタグフレーションに見立てて、ビジネスパーソンレベルで「退屈」と「不安」が同時進行している様子から、このように名付けられたものです。
ビジネスパーソンたちは、さしてやりたくもない仕事をし、同時にその仕事を失うことも恐れていると、述べられています。真面目に一生懸命働いているのに報われない、その不満を漏らすと「仕事があるだけいいじゃないか」と言われてしまいます。
問題は、平均より上の人があまりに多くなって、「平均以上」であることが普通になっていることです。それは、多くのビジネスパーソンが懸命に働き、自己啓発書などで仕事力を高める努力をしているからです。
だから、他人と同じ延長線上で抜きん出ようとしても、抜け出せないのです。「あなたは五年後、どんな地位についていたいですか」という目標設定の問いも、ナンセンスになってしまいました。
そこで、「明日は今日と違う自分にならなければならない」のですが、どうすれば良いでしょうか。
まず、三つのリストを作ることだと述べられています。
① 仕事上でやったミスを全部書き出すこと
② 仕事上の不満(同僚が抱えている不満も含めて)などの問題点を書き出すこと
③ 仕事に関してやっているあらゆることを書き出すこと
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次に、さきほど作ったリストに基づいて、アイデアのリストを作ることです。
① 是正策を練る。
② ミスを逆手に取って利用する策を練る。
ミスと思われた事象から良いアイデアに転じた「ポスト・イット」の逸話を思い出しましょう。
③ あるべき状態より、さらに良くなる策を練る。
・素晴らしいアイデアはどこからやってくるか、わかりません。
・ヒントとして、新しいアイデアというのは、別の場所に置き換えられた古いアイデアであることが多いのです。
・事例として、薬屋がシロップ状の頭痛薬を水で割って飲んだところから、コカ・コーラが考案されました。
・事例として、行商人が売れ残ったテント用の帆布でズボンをつくるのを思いついて、リーバイスのジーンズが誕生しました
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その次に、考案したアイデアを試したり実験したりしてみることです。過去の研究の成果から、「人は試すことが大好きだ」と証明されています。
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そして、やり方は色々あると思いますが、一つの方法としては上司などにアイデアの試験結果を説明してみることです(著書では、社員が上司にランチの場で非公式に話しています)。アイデアが採用され、事業や職場、作業の改善に役立てば、職業的スタグフレーションを克服する方向に向かいます。
「仕事は楽しいかね?」という本は、35歳のビジネスマンと起業家・発明家である老人が対話する物語になっています。その老人の知恵を以上のように僕なりに整理させていただきました。
職業的スタグフレーションを内在させているビジネスパーソンにとっては、この本の書名は心に響きますね。僕の手元にある本の奥書を見ると、第42刷発行となっています。
ご参考になれば、幸いです。