仕事力

心に響く自己啓発

つらい計画を先延ばししないためには?

経済学者の大竹文雄さんの著書「行動経済学の処方箋」(中公新書 2022年)によりますと、夏休みの宿題をいつ頃やったかについて、大阪大学でアンケート調査を行ったことがあるそうです。7割以上の人たちが夏休みの終わりの頃に宿題をしていました。最初は夏休みの早い時期に宿題を済ませようと計画していたのに、結局、夏休みに入ってから宿題をやるのを先延ばしにしたのです。

 

つらい計画を先延ばしにする人の特性、言い換えると、将来の利益よりも現在の利益を重視する特性を、行動経済学では「現在バイアス」と呼ぶそうです。「現在バイアス」が強いと、将来のつらい計画を立てることはできるのだけど、その計画を実行する段階になると、現在の楽な、楽しいことを重視してしまい、当初の計画を先延ばしにするのです。

大竹さんは、つらい計画を先延ばししないようにする方法を二つ述べられています。

一つは、「現在バイアス」を自覚して、計画をどうしても先延ばしできないように制約を設けること。

もう一つは、つらい計画を現在の楽しみに変換すること。たとえば、ダイエットのために毎日散歩する計画を立てた場合、散歩自体に楽しみを見つけるのです。

 

何年も前から、僕は家庭で風呂掃除を担当しています。いったん掃除を開始すると、基本的に掃除をやり終えるまで風呂から出られません。暑い時も寒い時も掃除の服装に着替えて、作業を遂行しなければなりません。「ああ、きつい」というのが口癖になりました。

風呂掃除を担当し始めた頃は、買い物に行くとか、おもしろいテレビを見るとか、理由をつけて担当任務である掃除を後回し、後回しにしていました。

ところがいつの間にか、風呂掃除を計画どおりに着手できるようになりました。作業を習熟した点もあります。もっと大きい要因があります。それは、風呂掃除をやり終えると、達成感を感じることができるようになったことです。「こんなきついことをやり遂げた。よくやった」と自分にほめています。さらに最近では、風呂掃除の作業工程ごとに達成感を味わえるようになりました。

 

仕事や勉強の計画は、つらいものが多いと思います。つらい計画に段階ごとに句読点を打って、実行したプロセスごとに達成感を味わえるよう工夫する。そうすれば、つらい計画を先延ばしせず、計画どおり着手できるようになると思うのですが、いかがでしょうか。