書名:七つの会議
著者:池井戸潤
出版社:集英社文庫
出版年:2016年
この本は、年商1千億円規模の中堅企業で起こった不祥事の物語です。全8章からなる連作短編小説です。
第1章はパワハラ問題、第2章は下請の町工場の経営問題、第3章は女性社員の退職問題と続き、章ごとに主人公が変わり、一見、関連性が乏しいことから物語が展開していきます。読み進めると、何か秘密があるなあと不可解さが脳裏にこびりついてきます。
何が何でも売上や利益のノルマを達成せよという社風から不正・偽装・隠蔽が発生し、ついに事件が発覚します。仕事は気楽なものではなく、厳しさを伴うものですが、一線を越えて悪いことをしてはなりません。
書名のとおり多くの会議が開催されます。僕は読みながらメモを取りました。定例会議、パワハラ委員会、環境会議、計数会議、役員会、課長連絡会、連絡会議、編集会議、営業会議、御前会議、調査委員会と、多数です。
最終第8章で事件の全容が解明され、この物語全体の主人公も明らかになります。主人公は意外な人物でした。あってはならない物語ですが、仕事とはこうあるべきだという言葉も見出すことができました。
「仕事っちゅうのは、金儲けじゃない。人の助けになることじゃ。人が喜ぶ顔見るのは楽しいもんじゃけ。そうすりゃ、金は後からついてくる。客を大事にせん商売は滅びる」
読了後、次の2冊の本を開き、改めて正しい道を歩まないといけないと思いました。
小宮一慶さんは、著書「社長の心得」(ディスカヴァー 2014年)の中でこう述べています。
利益を出すのは、社長や会社の義務ですが、それを「目的」にしている企業は働く人が疲弊しています。利益はあくまでも「目標」です。
目的とは最終的に行きつくところや存在意義です。何のために会社が存在しているかの根本的なことで、「ビジョン」や「理念」に表現されているものです。
ナポレオン・ヒルさんは、著書「成功哲学」(きこ書房 1996年)の中で「成功」の定義を述べています。
成功とは、他人の権利を尊重し、社会正義に反することなく、自ら価値ありと認めた目標(願望)を、黄金律に従って一つひとつ実現していく過程である。
※黄金律……自分が欲しいと思うことは、率先して他人にもそうしてあげること
「七つの会議」という物語を反面教師として、仕事とはどうあるべきかを、考える機会としたいものです。