経営学者の高橋伸夫さんの著書「組織力」(ちくま新書 2010年)を拝読して、現実の意思決定の不合理さになるほどと感心しました。著者は第1章の冒頭でこう述べています。
人生は、勢いでしか決められない「重大な意思決定」と熟慮に基づいた「つまらない意思決定」とで彩られている。
結婚とか就職とか不動産を買うとかといった人生で重要なことを勢いで決めていることが多いようです。それを「運命」と呼ぶ人もいます。
一方、トイレットペーパーなどの安い買い物ために価格を比較検討し熟慮の上、少し遠方のスーパーまで出かけたりします。
現実には、根本的で本質的な大問題をやり過ごして目先の小さな意思決定を行ったり、あるいは根本的で本質的な大問題をわざと見過ごして意思決定したりします。いずれも、根本的で本質的な大問題を何一つ解決していません。
PEST分析やVRIO分析など多種多様な分析手法があるにも関わらず、それらが真に活かされていません。最初から結論が出ており、勢いで不合理な意思決定プロセスが進められることがよくあります。こうした時にはあと付けで、その決定の合理性を補います。
また、決定内容の良し悪しより、組織構成員の合意・賛同・納得が得られることが大切で、そのような決め方がよりスムーズな組織的な実行に結びつきます。
僕は、まず仮説を考えた上で仕事を進めることが多いです。その方が迅速に進めることができます。ただし、仮説どおりいかなかった時は再検討します。
しかしながら、根本的で本質的な大問題をやり過ごしたり、見過ごしたりしている可能性があることは否めませんし、それを意識しなければならないと、この著書を拝読して思いました。