僕は二十数年ぶりに、スペンサー・ジョンソン著「チーズはどこへ消えた?」(扶桑社 2000年)を再読した。この本は、変化に適応することの大切さを気づかせてくれる寓話だ。
寓話に登場するのは、二匹のネズミと二人の小人である。この四名が迷路に入ってチーズを探し回り、そのありかを見つける。山のようにたくさんのチーズは美味しいごちそうであり、安定した生活や幸福を象徴している。
ところがある日突然、チーズは消えた。ここで、ネズミたちと小人たちの対応が分かれる。
ネズミたちは、チーズがないなら別の場所を探すしかないと考える。迷路の中でトライ・アンド・エラーを繰り返し、まったく離れた所で山のようなチーズに巡り合った。
一方小人たちは、「チーズはどこへ?」「なくなった原因は?」「近辺に隠されている?」「ここで待っていたら?」などと思案した。
小人の一人は、「リスクがある」と頑固にも安住の地から動かなかった。
もう一人の小人は、「ここにいても進展がない」と勇気を奮って迷路の中を探し回ることにした。苦労し教訓を得ながら、新しいチーズのありかを見つけ、ネズミたちとも再会する。
そして、旧友の小人がこの場所にたどり着くことを願った。旧友があとから追って来るときの目印になるようにと、迷路の壁のあちこちに自身が学んだ教訓を書き記してきた。学んだことの集大成として、新しいチーズがある場所の壁に次のように大きく書きつける。
・変化は起きる
・変化を予期せよ
・変化を探知せよ
・変化にすばやく適応せよ
・変わろう
・変化を楽しもう!
・進んですばやく変わり再びそれを楽しもう
旧友がやって来る気配が感じられたところで、この寓話は終わりとなる。
ちなみに、出口治明さんは著書「最後の講義 完全版」(主婦の友社 2021年)の中で、「人生は運と適応」だと述べている。
人間が動物である以上、生き残るために必要なのは「強さ」や「賢さ」や「大きさ」ではなく、「運」と「適応」がすべてなのです。適切なときに、適切な場所にいるという「運」を生かしながら、その運に対応できたものだけが生き残っていけるのです。それがダーウィン以来の自然淘汰説の真髄です。僕は人生をそのように考えています。
迷路をさまよい運にも左右されるが、変化に適応していくことは、生き残るための必須条件だと言えよう。