仕事力

心に響く自己啓発

人の強みを活かす

第96回アカデミー賞視覚効果賞は、映画「ゴジラ-1.0」が受賞しました。日本のみならずアジア初の快挙です。

2025年2月1日(土)に放送されたNHK「新プロジェクトX」は、その「ゴジラ-1.0」のVFXの制作現場に焦点を当てたものでした。VFX(ヴイエフエックス)とはVisual Effects(ヴィジュアルエフェクト)の略で、コンピュータを使った映像制作の技術のことです。パイレーツオブカリビアンなどハリウッドの大作映画では、VFXの制作現場に1000人規模の人員が投入されます。

しかし、山崎貴監督率いる白組は35人と、ハリウッドに比べて極めて小規模です。VFX分野では、日本はハリウッドの20年遅れと揶揄されてきました。日本映画が視覚効果賞を受賞することは、夢のまた夢そのまた夢でした。

山崎監督は、ハリウッドに負けない作品を作ろうと挑みました。その作戦の一つが優秀な人材の発掘です。インターネットを活用して、素晴らしいVFXの作品を探しました。そういう作品を作った人に、「いっしょに働いてみないか」とメッセージを送りました。

数人の若者が白組に加わりました。そのうちの一人は、「学校に行きたくない」いつも孤独な青年でした。VFXを独学しVFXに没頭する時間だけが、彼の孤独感を和らげてくれました。仲間に挨拶をしない、昼休みに2時間くらい勝手に不在になることもありました。「彼は大丈夫か」と、監督に忠告するメンバーもいました。

しかしその青年は、他のメンバーが何時間何日かけてもできない作品を半日でやってのけました。こうしたパフォーマンスに刺激されて、メンバー全員のスキルがレベルアップしました。監督は、白組みんなが天才だと言っています。

「協調性がないからダメだ」とか「コミュニケーション力が劣るからダメだ」とか考えず、青年が持っているVFXのスキルという強みを活かした点で、監督の人柄が伺えます。

P.F.ドラッカーさんは、常々「強みを活かす」べきだとおっしゃていました。彼の著書「プロフェッショナルの条件」(ダイヤモンド社 2000年)にこういう逸話が記されています。

リンカーン大統領は、グラント将軍の酒好きという弱みを知っていました。また、飲酒の危険性も十分承知していました。

一方、北軍の将軍の中で、常に勝利をもたらしたのは、グラントでした。リンカーンは、グラントの戦上手という強みを活かすべく、彼を北軍の最高司令官に任命しました。このことが北軍の勝利に大きく貢献しました。もしもリンカーンが、強みがなくても弱みの少ない人材を最高司令官に登用していたら、南北戦争はどうなっていたのでしょうか?

人の弱みに着目すれば、普通の人になってしまうだけです。強みを活かせば、天性の才能が開花し、「ゴジラ-1.0」のような素晴らしいものが生まれるのです。「強みを活かすこと」が望ましいのは、今も昔も変わりません。