池上彰さんの著書、「わかりやすさの罠」(集英社新書 2019年)を拝読しました。著者は社会情勢やニュースなどをわかりやすく解説することに定評がありますが、その著者が自ら「わかりやすさ」には罠があるとおっしゃっています。
郵政民営化は本当に財政再建に有効であったのか? 小泉元総理は、民営化すれば税金を使う側であった郵便局が税金を払う側になると明快に主張し、多くの国民を惹きつけました。本当に財政再建に貢献できたのか、事実はそうではないようです。
アウンサンスーチーさんは、一時、自宅に軟禁されました。本当に悲劇のヒロインであったのでしょうか。スーチーさんのご自宅は、バラ園が広がる広大なお屋敷です。パラボラアンテナが立っており、衛星放送も自由に受信できるようです。自宅軟禁とはいえ、一般的に思い描いていたのとは違う日々を過ごしていたようです。
ミハイル・ゴルバチョフさんは、旧ソビエト連邦最後の最高指導者です。西側諸国との和解を進めた立役者です。欧米で高く評価され、スーチーさんの受賞の前年にノーベル平和賞を受けておられます。しかし、著者がゴルバチョフさんにインタビューした時には、冷徹なビジネスマンとしての印象が強かったそうです。
著者は「わかったつもり」になってはいけない、「断片的な知識」ではいけない、もっと「知る力」を鍛えなさいと警鐘を鳴らしておられます。
以前にこのブログで、一次情報、二次情報、三次情報の話をしたことがあります。
・一次情報
自分で見聞した情報や実態調査、実験などによって直接収集した情報のことです。
・二次情報
一次情報を編集、加工した情報のことです。
・三次情報
情報源が定かでない情報のことです。
二次情報や三次情報に振り回されてはいけません。必要に応じて現物を確認する(すなわち、一次情報を取得する)と、正しい事実を発見できることがあります。
僕はこの著書を拝読して、物事の本質に近づくために一次情報の大切さ、断片的な知識の危険性を改めて実感しました。